No.053 ムッシェル


千年亀砂丘
ミケネー島

 「なぁ、亀の砂丘に行こうぜ!」
 「うんっ。あ。でも、母さんが心配するかな、危ないって言ってたよ。確か、ぷにぷに、だっけ?が出るんだとかって」
 「大丈夫だ。俺船乗りになるんだぞ、それくらいどってことねーよ」
 「そうだよね。じゃ、行こうよ。ほら、早く早く!!置いてくぞ」
 「こら、待てって」

 「「ついたー」」
 「疲れたー、やっぱ遠いね」
 「何言ってんだよ、これくらいで疲れてるようじゃ、海の男になんかなれねーぞ」
 「あたしは女だよ、この馬鹿っ!」
 「うわ、殴るなよ。わかったよ、海の女にゃなれねーぞ!これでいーだろ」
 「ふん、わかればいーんだよ、もっと口の利き方には気をつけろよ」

 「あ、これって食べられるんだよね」
 「そう、この貝美味いんだよ。うちの店にも置きゃーいいのに」
 「そうだ、母さんに持って帰ろうっと。父さんも帰ってきたら食べるかな」
 「土産ねぇ。俺はいいや、どうせ帰ったらとーちゃんに殴られるんだ、土産なんかもったいなくてやれねえよ」

 「……!?
  おい、逃げるぞ。魔物だ!」
 「え!?…うん、わかった」

 「やっぱ、お前足速いよな。ぷにぷになんか追ってこれねーや」
 「あんた『それくらいどってことない』んじゃなかったのかい?」
 「…悪かったよ。次は任せておけって。倒してやるからさ」
 「ふふ。わかったって。ほら、暗くなってきたし、さっさと帰ろう」
 「んだよ、信じてねーだろ。ま、いいさ。何かあったとき、わかればいいし」
 「さ、帰ろう」
 「あ、お前もう貝はいいのか?ほら、ここにも落ちてるぞ」
 「ありがと。じゃ、お礼にこっちをあんたにあげる」
 「は?いらねーってさっき言っただろ」
 「いいから。持って帰んなって」
 「ちぇ」



 「あの、これ下さい」
 「カスタニェッテ?悪いがこれは売り物じゃねーんだ」
 「ふーん、そうなんですか。じゃ、何で店頭に置いてるんですか?」
 「はは、中身は腐っちまうけど外身は残るからよ」
 「?…カスタニェッテはムッシェル原料ですし、まぁそうですよね」
 「やけに詳しいな、あんた錬金術でもやるのか?」
 「はい」
 「そうか、ザールブルグから来たって言ったっけか。折角遠いところから来てくれてるんだし、この本をやるよ」
 「あ、ありがとうございます!あの、さっきのカスタニェッテですけど、あそこをちょっといじると音が良くなると思うんですけど…」
 「いや、いーんだ。こりゃ、俺の手製だからよ」
 「そうですか。じゃ、ありがとうございました!」
 「そりゃこっちの台詞だ。また来てくれよな」



※エリーのアトリエサイト、「オレンジの軌跡」様閉鎖の為、頂いてきた品々です。
 こちらの5作品を書かれたのは、管理人をされてらっしゃった「まはる」様です。なので二次著作権はまはる様にあります。無断転載などはされないでください。
 閉鎖を知り、無理を言っていただいてきてしまいました。こんなに素敵な作品がWEB上からなくなってしまうというのは凄く残念な事だと思ったのです。では、どうぞお楽しみくださいませ。

ダグエリも好きだけれども、オトユリも好き。その理由はオットーもユーリカもイイヤツ!だから。
と言うわけでこの一作を頂いてきました。オットー…さりげなく格好いいじゃないですか。


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