== along the river == カプサイシン様


 

アンジェリーク
お前は…人生とはどんな物だと考えているんだ?
おいおい、そんなにキョトンとした顔をするな。
まだ、そんな事は考えた事もないだろうな…
俺もそうだったよ…毎日が楽しくて…一日一日が飛ぶように過ぎていった。
未来が俺の前に無限に広がっているように感じたものだ。
…ん…今はどうかって?
ははは…そうだな…だいぶ選択の幅が狭くは…なっているな。
その分、広く、遠く、世間って物を見る事が出来る。
なぁ…アンジェリーク。
俺はな…人生って奴は…
川の流れに沿って上へ上へと登って行くような物だと思うんだ。
逆じゃないかって?
そうじゃない。
この世に生まれ落ちた瞬間人は大海原の真ん中にいるんだ。
どの方向へでも進める。
そのうち風が吹いてきたり海流に流されたりして、どこか陸地へ辿り着く。
人はそこで、自分が目標とする高みを見つけてその場所を目指し歩き始めるんだ。
最初のうちは川幅も広い、だか、流れを溯るうちに川は枝分かれして細くなる。
どの流れを選ぶのかは個人の自由だ…
選ぶ流れを間違えたと思えば、選び直してもいい。
だが確実に今いる場所は元の場所より高くなってゆく。
そうするとな…選べる流れが狭くなる代わりに遠くまで見えるようになるんだ。
最初に話しただろう?
俺はお前なんかよりだいぶ上流まで登ってきているんだ。
俺から見れば、お前は…そうだな…河口あたりでウロウロしているように見える。
その…危なっかしくって眼がはなせん…
だが…お前は確実に正しい流れを選んでいるぞ…迷いながらもな…
その流れはきっと、途方もない高みへお前を導くだろう。
俺なんかが逆立ちしたって届かんような場所へ…
空に輝く星ほど高く…な…
こら、笑うな。
俺だって、たまにはこんな気分になる時があるんだぞ。
お前の笑顔は…その瞳の輝きは…星のようだな…
あぁいや、詰まらん事を言った。
星ってのは不思議だぞ。
高い山へ登るほど冴え冴えとして、手が届きそうにも思えるんだが…
決してその煌きをこの手に掴む事は出来ないんだ。
俺は見上げて憧れつづけるだけだ…
そんな所もお前と似ているな…
どうした?目にゴミでも入ったのか?見せてみろ。
アンジェリーク、泣いているのか?
おっ!いきなり飛びつくな!
胸元で泣かれると、くすぐったくていかん。
人に見られたらどうする。
俺は男だから別に構わんが、お前は…女王候補だぞ。
違う!それは違うぞ!アンジェリーク!
確かに教官と女王候補としてお前と巡り会った。
だからと言って、一人の女性として見たお前に魅力が無いわけじゃない。
むしろ、ありすぎて困るぐらいだ。
だから、俺はここで、こうしてお前が望む高みへ辿り着けるよう力を尽くしている。
お前がお前にふさわしい場所で輝けるように
何を言い出すかと思ったら…本気なのか?アンジェリーク。
確かにどの流れを選択するかはお前の自由だが
本当にいいのか?
俺と、こんな俺と同じ川の流れに沿って歩きたいと、そう言ってくれるのか。
そうか!お前がそう言ってくれるなら、二人で新しい場所へ登って行こう。
疲れたら俺が背負ってやる。
嵐が来たら守ってやる。
だから、泣くか笑うかどちらかにしろ。
頼む、笑ってくれ。
そう、その笑顔、開いたばかりの花が朝露を宿しているようだな。
俺の隣で、ずっと咲き続けてくれ。
アンジェリーク
天から俺の腕の中に飛び込んできた愛しい花…

 

 


ルヴァロザ創作小説サイト「縁側でお茶」のカプサイシン様が「くり茶々やほんぽ」
オープン記念に書いてくださった、やたら蒼太好みの渋いヴィクトール様でございます!
『本気なのか?アンジェリーク』この台詞からあとは、全て蒼太のツボに…。
これをちょちょいと書いてしまうカプ様が…羨ましいやら悔しいやら
有難うございました、カプ様!!
頂き日 2001.07.23
* この創作の著作権は、カプサイシン様のものです。

inserted by FC2 system