ただ1つの場所    きしこ 様


 

「陛下〜〜〜?」

ギクッ

ふ、振り向くのが怖い・・・
だって、今の自分の姿を考えたら、ロザリアの顔なんて・・・
私服に着替えて、窓の枠に右足が掛かってるんだもの。
しかも、脱出用のロープも・・・

「陛下?」
うわ〜〜〜ん、ど〜〜〜しよ〜〜〜、あっ!
「ごめんね、ロザリア」
「え?ちょ、ちょっと、アンジェ!」
その時、私の身体は窓の外へ・・・と〜ぜん、落ちる!
でも、大丈夫!だって、

ドサッ

少し衝撃があったけど、無事彼の腕の中。
「どうして、こう無茶ばかりなさるのです?」
こ、声が冷たい・・・怒ってる?でもね、
「だって、オスカー抱きとめてくれるでしょ!」
にっこり笑って、そう言うと・・・オスカー頭抱えちゃった。
ん?ちがう・・・笑ってる!肩震えてるもの。
ん〜〜〜、とりあえず、抱きついとこ。
そうすると、優しく抱き返してくれた。うふっ、嬉しい。
「それじゃ、補佐官殿。陛下はお借りして行く」
「行ってきま〜す!あっ、ロザリアはルヴァの所に行ったら〜?」
その言葉に真っ赤になってる、可愛い〜〜〜。


いつも冷静沈着で、頼りになる私の補佐官。
そのロザリアが、補佐官という仮面をぬいで素に戻れる場所。
それが、ルヴァの傍。
私にとって1番安心できるのが、オスカーの腕の中であるように。


そのまま馬で丘の上まで行く。そして、そこから聖地を見下ろす。
そのあと、そこに寝転がって・・・私はそのまま眠っちゃうのよね。
これが、いつものパターンなの。
その間、オスカーが何をしているのか、知らないけど・・・
ふっと目を覚ますと、いつも優しい目にぶつかる。
それに安心し、また目を閉じる。

そして、次に目覚めると・・

 

 

 

 

 
「あ〜〜〜ん、もう真っ暗!」
「良く寝てたからな、まぁ俺は、君の可愛い寝顔を堪能できたから、
 良かった・・・かな」
うっ、その笑顔は反則よ。優しい目、優しい表情、あなたが、
私だけに見せてくれるその顔は、嬉しいけど、恥かしい・・・
「お、起こしてくれても・・・」
そう言ったら、 とんでもない とでも言うように手を振って、
「ご冗談を」
「どうして?」
「俺が!自分で!わざわざ!こんなおいしいシチュエーションを壊すと思うのか?」
はい?今なんか、とんでもないセリフを聞いたような・・・
しかも!その笑い方って・・・
カッコ良いけど、やな予感がするの〜、なんなの〜〜〜???
聞いても笑うだけでなにも答えてくれない。気になるじゃない〜〜〜!


「ほら、そろそろ帰らないと補佐官殿の頭にツノが生えるぞ」
何時の間にか馬に乗っていたオスカーに、引っ張り上げられて。
ゆっくり宮殿へと戻りながら、だんだんと憂鬱になってきた・・・
ロザリアの頭にツノ?そんなの生えてるに決まってるじゃない!
あ〜〜〜ん、今夜もまた、お説教だよ〜〜〜


次に何時戻れるか分からない、大好きな人の腕の中。
でも、この腕があるから、頑張れる。
後ろでずっと見守ってくれてるから。
何かあった時は、すぐにこの腕が助けてくれるから。
このただ1つの大切な場所。
ここがあるから、私は女王でいられるのかもしれない・・・


何気にルヴァロザ風味…(ニヤリ)
『聖なる〜After Noel』のキリ番ゲット! きしこ様から頂きました!有難うございます!!
リク内容は「コメディタッチのオスアン」でした。そして書いてくださったのがこのお話。ちょっと切なく、そして甘く。
次にいつ戻れるか分からない…それって、女王アンジェリークならではの事ですよね。
けれど、きしこさまの書くアンジェリークはいつも元気一杯!です。

* この創作の著作権は、きしこ様にあります。

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