First date ぷるりん様


今日は日の曜日。
聖地は何時にもましていいお天気。
抜けるような青空、吹き抜けるさわやかな風。
想いを確かめ合った恋人たちの初デートにはうってつけの日だ。
女王候補アンジェリーク、精神の教官ヴィクトール。
この2人、まさに今日が真の意味での初デート♪
アンジェリークお手製のお弁当を持っての遠乗りにやってきたのだが・・・

アンジェリークは泣きたくなっていた。

なんとなれば、彼女の想い人、
先刻から上の空というかなんと言うか・・・・・・
心ココにあらず、というような風情なのだ。
まだ17歳。初めて真剣に恋した相手との初めてのデート。
ドキドキしながら話し掛けても
「あぁ・・・そうだな。」
このセリフの繰り返しなのだ。泣きたくもなるだろう。
一方、ヴィクトールはといえば・・・・・・
上の空・・・などではなく、緊張していたのだ。
王立派遣軍きっての英雄、職務に忠実でありつづけた男が恋に落ちた。
14歳も年下の女王候補である少女に、だ。
しかも、少女の方から想いを伝えて来てくれた。
そして迎えた今日の日である。
天にも昇る心地であったのだが・・・・・
如何せん!無骨な軍人気質が!
晴れて恋人同士となった今、アンジェリークにそう接すればいいのか?
頭の中が真っ白になるほど、緊張しきっていた。
そんな状態ではあったが
恋しい少女の顔見たさに、必死で視線をそちらへ向けてみれば・・・・・

 

な!どうしてだ?
どうしてアンジェリークは・・・
泣いているのか?!

哀しげにうつむく少女の姿が飛び込んできた。

 

 

 

 

「アンジェリーク・・・・・」
返事はない。
「どうかしたのか?具合でも悪いのか?」
いい年した男が露骨にうろたえまくってしまう。
少女はフルフルと首を横に振った。
「何があったんだ、話してくれ」
目の前の少女は小さな声で
「何でもないんです・・・・・・・。」
と、呟く。
「何でもない、という事はないだろう。泣いているじゃないか!」
そう言われてアンジェリークはそうっと顔を上げた。
姿勢を正し、ヴィクトールの瞳を覗き込む。
「ヴィクトール様、私・・ヴィクトール様が大好きです。」
ズッキーン!ヴィクトールの胸が高鳴った。
「だから、本当の事を言って下さいね。」
ー本当の事?
「ヴィクトール様は、私を好きだと言って下さいました。でも、本当は・・・・」
ー本当は、何だっていうんだ?
「私に気を使って下さったんじゃないですか?ヴィクトール様は優しい方だから・・・・」
ーそんな!
「今日のデートも、本当はご迷惑だったんじゃないですか・・・」
「アンジェリーク!それは・・誤解だ!!」
絶叫していた。
そのまま折れてしまいそうに華奢な体を抱きしめる。
「そうじゃない、そうじゃないんだ。俺はお前に惚れている。
 今日、こうしてお前と出かけられて嬉しかったし、
 まさか、手作りの弁当まで持ってきてもらえるとは・・いや、あれはうまかった・・・・」
「あ・・・・・だから」
ーだから?アンジェリークの瞳が答えを待って潤んでいた。
「好きだ、アンジェリーク。どうしたらいいのか分らないほど。
 ・・・・・・・お前が好きだ。」
「ヴィクトール様・・・・・・」
アンジェリークの目から、再び大粒の涙が零れ落ちた。
「な、どうしたんだ?」
「あ・・私、私、嬉しくて・・・・・・・」
アンジェリークはヴィクトールの胸に顔を埋める。
ヴィクトールも少女が愛しくてたまらず、抱きしめる。
2人の心は、本当に通じ合ったらしい。

<END>


 

おまけ

「よかったですねぇ、一時はどうなる事かと思いましたが・・・。」
「ね?私の言った通りでしたでしょう?」
木陰から2人の様子を見守って(のぞいて?)いたのは
地の守護聖ルヴァと、女王補佐官ロザリアだった。
この2人も、久々のデートを楽しんでいたのだが・・・
そこにやって来たのがあの出来たてカップルだったのだ。
「そうですねぇ、本当にロザリアが言った通りでしたぁ。心配する事なんてなかったんですねぇ」
ルヴァの肩に頭を寄せながら、悪戯っぽく微笑むロザリア。
「当然ですわ。あの頃の私たちとまったく同じでしたもの♪」
「あ〜そうでしたねぇ、でも・・・・私の場合、あなたの馬に乗せて頂いてますが・・・」
「そんな事は問題じゃありませんのよ。ね、ルヴァ」

丘の上。
心地よいそよ風が2組のカップルの間をすり抜けていった。

<END>

いつも仲良くして頂いているぷるりんさまのお部屋「Irish coffe」(閉鎖されました)にて、333を踏んだ蒼太が
「あ〜これがキリ番だったら、ぷるりんさまのお話貰えたのにな〜。」
とこっそり呟いた所、なんと! 特別に書いてくださいました!!

驚いたけど、凄く嬉しかった!
しかもリクエストのヴィクコレのみならず
お惚けで可愛いルヴァロザまで!(T_T)/〜♪
二組とも爽やか〜な、とてもイイ雰囲気〜。
ぷるりんさま、忙しい中で書いていただいたヴィクコレ小説、有難うございました〜!!
* この創作の著作権はぷるりん様にあります。
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