ゼロの距離


 



── ああ、なんだかすごい雷だなぁ…
 エリーはベッドの中で寝返りをうちながら、窓を打つ雨の音に目を向けた。
 夜半過ぎから降り始めた雨が、明け方近くになって、嵐になったようだ。
 窓枠まではっきりとわかるほどの雷光が、ガラスを揺らす。
 雷はそんなに怖いと思わないほうだ。でも、あまりの風に工房が揺れるのは怖い。
 こんな時に、家族がいてくれたらと思うけれど、今はブランケットを頭までかぶって眠るしかなかった。
 ふぁ…と一息あくびをして、そのまま眠りに落ちる。
 明日は寝不足になりそうだ。



 それから、数日後。
「ダ〜グ〜ラ〜ス」
 城門にいなかったダグラスを探して、詰所まで顔を出したエリーに、ダグラスは驚いたような顔をした。
「なんだおめぇ。こんなとこまで」
 食後の休憩時間だったのだろう、青い鎧を上半身だけ外した姿が、ダグラス以外にもちらほらと見える。
 ザールブルグの夏は過ごしやすいが、騎士たちにとっては暑い。
「おっ、ダグラス。こんなとこで逢引か?」
「ばかやろう、そんなんじゃねぇよ」
 からかいの声に、ダグラスばかりか、顔だけを詰所にのぞかせたエリーまで赤くなる。
── やだなぁ、この間までこんなことなかったのに。
 くるりと背を返して、詰所の外壁に背中を寄せる。
 ほんの少し前から、ダグラスとエリーは恋人同士になった。
 これまで何とも思っていない様子だったくせに、こちらが告白しようとしたら、途端に積極的になったダグラスに、エリーは戸惑いを隠せない。
 それに、周りも変わった。
 飛翔亭に行けば、ロマージュにはからかわれるし、ハレッシュには羨ましそうに、それでいて優しい目を向けられる。
 こうして、以前と同じように納品に来ただけでからかわれるのも、ダグラスが周囲にはっきりその態度を示しているせいだ。
 エリーとほかの男を二人きりにさせなかったり。
 何かの拍子にひょいと肩を抱いたり。
── 私が、気づいてなかっただけなのかなぁ。
 思えば、肩を抱くぐらいのことは前からされていた気がする。それに、頭だって撫でられていたし…。
 それでも、関係が変わったその瞬間から、同じ態度が違って感じてしまって、エリーはダグラスに会うたびに動揺ばかりだ。
 紙袋を抱えたまま、そっとため息をついた。
「おい」
すぐそばでした声に、エリーはびっくりして顔を上げる。「依頼品は?」
 午後の任務のためか、鎧を付け直したダグラスが立っていた。
 紙袋に気づいていたのだろう、よこせというように手を出すダグラスに、エリーは少しひるむ。
── 半歩。
 今までと半歩距離が違うのだ。
── ちかい、よ。
 顔をぐっと上に上げないと、ダグラスの顔が見えない。
 それ以前に、顔が赤くなっているのではないかと顔が上げられない。
 エリーはぐいと紙袋をダグラスの手に押し付けた。
「はい。フラムが4個と、クラフトが8個だったよね?」
 かさりと鳴った紙袋からは、火薬の香りがかすかに匂う。
「おう」
 今回のフラムには自信があった。妖精たちもだいぶ作業が早くなってきて、いろいろと試す時間が増えてきている。
「へぇ、早いな」
 品質を確認するように手に持って、ふとダグラスの目が笑う。
── あ、気づいてくれた。
 ダグラスが依頼品を見ている間、エリーは顔を上げてダグラスの顔を見ることができる。
 うれしくなって、にこにこと笑っていると。
「おめぇも成長したなー」
 帽子をかぶった頭に手を突っ込まれて、ぐりぐりとかき回された。
「あっ、もう、ちょっと!」
 ぐしゃぐしゃになった髪に手を伸ばす。
 ダグラスは笑って、代金を支払おうとしたが。
「…っと… 釣りがあるか?」
 手の中に銀貨数枚と金貨しかない。
「えっと…待ってね。そんなにあるかなぁ」
 飛翔亭の帰りでよかった、とポーチを探り、エリーは釣りを手渡す。
 最近、工房の資金は潤沢だ。妖精たちを雇ってから、順調にうりあげを伸ばしている。
「サンキュ、悪ぃな。……ところで、エリー。今夜……」
「ダグラス! 交代に行くぞ」
 後ろから声がして、ダグラスは振り返る。
「あっ…と…。またな、エリー」
 フラムの入った紙袋を抱えて、ダグラスはあっという間に姿を消した。
 これからまた城門に立つのだろう。
 帰りがけにはその姿を少し見られるかもしれない。
「よーし…私も頑張らなくちゃ!」
 ぐっと気合を入れて、エリーも踵を返した。



 

「エルフィールさん」
 城から工房絵の帰り道。
 珍しい声にエリーが振り返ると、白い修道服に身を包んだ若い女性が、微笑んで立っていた。
 どうやら、教会の前をエリーが通り過ぎるのをみて、慌てて出てきたようで。
「ミルカッセさん」
 外で見かけるのは珍しいその人には、エリーの顔を見ると、困ったような顔をして首をかしげた。
「あの…エルフィールさん、今、少しお時間いただいてもいいですか?」
「いいですよ? どうしたんですか?」
「ええ…実は…」
 先日の落雷で、教会の屋根についているアルテナの紋章が落ちてしまったのだという。
 ちょっと不吉だなぁ、などとエリーが思っていると、ミルカッセは空を見上げて、教会の尖塔の上に視線をやった。
「幸いけが人は出なかったのですけど、修理をどうしようか悩んでしまって…エルフィールさんなら、どなたかそういったことに詳しい方をご存じじゃないかと思って」
 『なんでも引き受け屋』に近い飛翔亭へ赴けば、解決するかもしれないと思っていても、ミルカッセには酒場に足を踏み入れるのが難しかった。その点エリーならと思って声をかけたのだろう。
 そうと聞いたエリーは、顎先に指を当て、工房の様子を思い浮かべた。
── 確か…アレがあったはず。
 つい先日、エリーは『空飛ぶほうき』の調合に成功していた。まだ、試していないけれど…。
「ミルカッセさん」
返事をじっと待っていたミルカッセが、なんでしょう、と微笑む。「ちょっと待っていて下さいね、すぐ戻りますから」
 不思議そうな様子のミルカッセを残して、エリーは工房へと走って行った。




「ちょっと多いぞ?」
 納品されたフラムとクラフト、それから返された銀貨を見て、騎士団の出納係が言った。
「何が?」
 交代時間が迫っていたダグラスは上の空で尋ね返す。
「銅貨だよ。支払いもらしか?」
「そんなはず…」
ねぇだろ、と机の上を見るが、重ねられた硬貨の数は、確かに明らかに多い。「しまった…」
 急いでいて確認を怠ったせいで、エリーから余分な釣りをもらってしまったらしい。
「なんだ、お前のミスか?」
「そうみたいだ。多くもらいすぎた…っと…返さなくちゃいけないのはいくらだ?」
 これだけだ、と渡された硬貨が手の中で鳴る。
 大した金額ではない。今夜会ったら返せばいい。
 そう考えて、ふと思い出す。
 今夜と言いかけて、エリーにそれを伝えていなかったことを。
── 別に、約束なんてしなくってもな。
 探さなくても、エリーは大抵工房にいる。
 採取に出るなら自分を誘うし、もしいなくても飛翔亭だ。
 夕食に誘う気でいたダグラスは、そう考えてから、思い出す。
『先に言ってよ、もう。ごはん作っちゃったし、妖精さんたちの分だって…』
 少し前に夕食に誘った時のエリーの台詞。
 なんて所帯じみてるんだとか、せっかく誘ってやったんだろとか、そんなことを言って喧嘩した。
 どうせ、行く先は飛翔亭だが。
 一応、恋人らしいことをしてみようと思ったわけだ。
「おい、ちょっと」
 目の前の出納係も、聖騎士の一人だ。
 ダグラスは悪いな、と一つ断って、門番の交代を押し付けた。





「エルフィールさーん、大丈夫ですか? 無理だと思ったらすぐ降りてきてくださいねー!」
 エリーが最初に持ってきた箒を見たミルカッセは、目を疑った。
 これで、空を飛ぶというのだ。
 まさかと見守る前で、エリーがその箒にまたがり、飛び上がったのを見たときには、心底驚いた。
 錬金術というのは、まったく果てしがない。
 だが、重みのあるアルテナの紋章を抱えて飛ぶのは、かなり難しいことのようで、ミルカッセの上空で、エリーがふらふらとしている。
 オレンジ色の服が、思ったよりもちいさく見えてきたのを見て、心臓がどきどきとはねる。
「ああ…何かあったらどうしましょう…」
 大変な事を頼んでしまった、と、思っても、いまさら止められるものではない。
 胸元に手を寄せて、ぎゅっと握る。
 ようやく、エリーが尖塔にたどり着いた。
 平らな屋根に足を下ろすのを見て、少しだけほっとする。
「ミルカッセさーん、ここでいいんですか?」
 運んだアルテナの紋章が、元の位置に戻されるのを見て、ミルカッセは強く何度もうなづいた。
「はい、いいです。いいですから、早く降りてきてください…」
 元気な声にも、不安は募る。
 重いのだろう、少しよろよろしながら、紋章を固定している姿が見え隠れしている。
 やがて、空飛ぶほうきを手にしたエリーが、先程のように箒にまたがって、屋根から飛び降りた。
「ああっ…」
 心臓に悪い。
 いくら飛ぶと聞かされても、見た目はただの箒なのだ。
 だが、エリーは少し余裕が出てきたのか、あたりをゆっくり旋回して、降りてくる。
「エルフィールさん、ああ、危ないです……」
 手をしっかり握りしめ、はらはらと見守る。
 その時だった。
 夏の突風が、教会の木々をごうと揺らした。
 その風が、空を飛ぶエリ―にたどり着くのは一瞬。
「っ…わ!」
 声にならない声が聞こえて、箒にまたがったエリーがバランスを崩した。
 箒から、体がずり落ちる。
「エリーさん!!」
 ミルカッセが覚えているのは、そこまでだった。
 地面に叩きつけられるエリーを想像して、一気に血が引け、気絶した。





 見覚えのあるオレンジ色の服が、ちらりと目の端に入ったのは奇跡だったと思う。
 エリーの工房に向けていた足を止めて、青空を見上げたダグラスが見たのは、信じられない光景だった。
 ただの箒に、自分の恋人がまたがって、空を、飛んでいる。
── はぁ?
 なんだ、あれ。
 目をこすったが、見間違いではなさそうだ。
 教会のあたりだろう、高い木々の傍をかすめるように旋回している。
「今度は何のアイテムだ!?」
 広場から見える高さを飛んでいるということが、ダグラスの肝を冷やす。
 ダグラスは教会に向かって走り出し。
 そして。
 突風に吹かれたエリーが、箒から地面に落下する、その瞬間に出くわした。
「っ……エリー!!」
 地面と。
 落ちてくるエリーの間に、走りこむ。
 腕に、いつものエリー以上の重みがかかる。
── このまま…
 落とすわけにはいかない。
 全身の力を腕に込め、逆に膝は柔らかく撓ませる。
「ぐっ…」
 落下速度とあいまって、背中に不自然な力がかかる。
 だが。
 …エリーは、無事に腕の中にいた。
「……っ…は…」
 そのまま、膝から地面に崩れる。
 腕の中のエリーは気を失っているようだった。
 ミルカッセの叫び声が聞こえていたのか、教会の中からばらばらと走り出てくる足跡がした。
 ほっとする、と同時に背中に冷たいものが走った。
 あと一歩、届かなかったら。
 すぐにエリーを追いかけてこなかったら。
 受け止められなかった。
「ミルカッセさん!」
「どうしました!?」
 信者なのだろう、ミルカッセと、エリーとダグラスを囲む人の輪の先に、箒が転がっていた。
「…あ…」
我に帰ったダグラスが、身を起こす。「……シスターは大丈夫だ。気を失ってるようだから、中に運んでくれ。それから、あの箒も。中に運んだらあまり触れないように」
 ダグラスの青い鎧を見ると、人々は素直に従って、ミルカッセを抱き上げ、箒を片づけていく。
 ダグラスは、背中の重い痛みを無視して、エリーを抱き上げ立ち上がった。




「…ん…、んー…っ」
 久しぶりにゆっくりと休んだ気がして、ベッドの中、大きく伸びをすると、エリーはすっきり目を覚ました。
── 今日の依頼はなんだっけ。まず、乳糖をつくって…それからコメートを磨いてもらって…あ、ダグラスに依頼品を届けに行かなくちゃ。
 と、そこまで考えてから、首をかしげる。
「ダグラスに依頼品…渡したよね」
 そんな気がする。とつぶやいた、その時。
「渡したよね、じゃねぇよ、この莫迦っ!!」
 耳がおかしくなるような大声が、部屋の中響き渡った。
「っ、え、えっ…!?」
 エリーは慌てて起き上がり、部屋を見渡す。間違いない、ここは工房の二階だ。
 なのに、ここで聞こえるはずのない声が聞こえる。
「だ…ダグラス?」
 気づけば、いつもの服のままベッドに寝かされていた。ダグラスが椅子をベッドの脇に引き寄せて、聖騎士の鎧のままで座っている。マントさえとっていない。
「ダグラス? じゃねぇ! 覚えてねぇのか、この莫迦! 阿保! じゃじゃ馬が!」
 一気に言われて頭が混乱するばかりだ。
「覚えて…って… …あ!」
 エリーは思い出した。
 空飛ぶほうきのこと。
 そのほうきから、確か自分は…
「あれっ、どうして、私…確か…」
ばっと体を起こして、全身をなでる。腕も、足も、無事だ。擦り傷一つない。「なんで……私…」
 確かに相当な高さから落ちたはずだ。無事であるはずがない。
「…なんで、じゃねぇよ…」
 苦しげな声に、はっと顔を上げた。
 ダグラスの青い目が、じっと自分を見ている。
「ダグラスが…助けてくれたの?」
 間違いない、そう確信してダグラスをみると、青い瞳の聖騎士は、椅子から立ち上がって、エリーの肩を押した。
「寝てろ。今医者が来るから。もしかしたら、どこか打ってるかもしれないからな」
 ベッドに横たえられながら、エリーは慌ててダグラスの腕をつかむ。
「あのっ、あの、ごめんね? 私、落ちると思ってなくて」
「当たり前だ」
 ひどく怒った声。腕に添えた手は、逆にブランケットの中に入れられてしまった。
「……ごめんね…」
 怒鳴られたほうが、ましだと思った。
 目をそらしてまた椅子に座ってしまうダグラスの横顔を見て、エリーはしゅんとうなだれた。
「謝るな。…いや、ものすげぇ謝れ」
 腕組みしたまま、ダグラスがいう。
「ごめんなさい」
「もっと」
「ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんね、ごめんなさい」
そっぽを向いたダグラスの横顔に、横たわったままのエリーが何度も繰り返す。「…ごめんね?」
 最後は尋ねる様に、一言。
 ダグラスは、ため込んでいたものを吐き出すように、深く一つため息をつくと、エリーに向き直った。
「もう、あの箒は使用禁止だ」
「うん」
「アカデミーに引き取ってもらったからな」
「えぇっ!」
 突風に耐えられないということは、品質が悪かったということだ。あとでイングリドからお叱りを受けるだろうことを思って、エリーが変な声を出した。
「ええ、じゃねぇ! ほんとにわかってんのか!」
 再びの雷に、エリーが身をすくめる。
 ダグラスは腕組みを解いて立ち上がった。
 キシ…と、ベッドがきしむ。
「もう少しで、死ぬところだったかもしれないんだぞ」
 ダグラスはエリーのベッドに腰掛け、寝ているエリーの髪に触れた。
「ダグラス…」
 触れられる手の優しさに、叱られているにも関わらず、心地よさと、安心感が胸をいっぱいにする。
 いつも、ダグラスはこうしてくれる。
 お父さんみたい、と言って怒らせたのは、アカデミーに入学してすぐのころ。
 今は…違う。
「あんまり、はらはらさせんなよ」
「うん…」
「……間に合って、よかった」
 何が、とは聞かなかった。
 たぶん、本当に危ないところだったのだろう。
 ダグラスの声と、手の優しさに、目を閉じる。
 自分を守ってくれる手。
 それから、叱ってくれる手。
── 大好き。
 そう思ったら、おなじ言葉がするりと口からこぼれた。
「大好き。ダグラス」
 はっと息をのむ声に、エリーもはっとして目を開けた。
 青い目が驚いたように見開かれる。
 そうだろう、こんなに、はっきりと伝えたのは初めてだから。
 自分の髪をなでるために、かがみこんだダグラスの顔が近い。そして、耳が赤い。
 照れると、顔よりも耳が赤くなる人だと、知っている。
 自分の顔も、熟れた様に染まっていることだろう。
「あ、あのね…あの…」
誤魔化そうと慌てる「…っそうだ、今度採取に行こうね。私、そろそろストルデル川にいかなくちゃ…」
 ベッドに、重みがかかる。
 髪をなでていた手が、枕元に突かれる。
── 近い、よ。
 距離が、以前とやっぱり違う。
 額に、唇が触れる。距離はゼロ。
「ふ…」
 しかし、一度で終わると思ったそれが、もう一度触れる。
 今度は頬に。
 少しかさついて、温かくて。
「あ……」
 息を継ごうとすると、声が、漏れる。
 薄く目を開けると、ダグラスも目を開けていて、目が合って。
 慌てて目を閉じた。
── どうし、よう…。
 ギシ、とさらに深くベッドが鳴る。
 聖騎士の鎧が重いせいだ、とどこかで思う。
 今度は、耳に。
「ダ…グラス…」
 名前を呼ぶのが精いっぱいだった。固い黒髪が頬に触れた、と思った次には、唇にキスが落ちた。
「エリー…」
 いつもより熱を帯びた声が、した。


「おねーさん! お医者さんが来たよ!」
 高くよく通る声が、階下から聞こえて、二人してびくりと跳ね上がった。
 妖精の軽い足音の次に、大人の足音。階下で妖精が事情を説明しているようだ。
 ダグラスが慌てて身を起こし、離れる。
「…っと…」
 耳が真赤だ。
「え、と…」
 身の置き所がなく、エリーはブランケットの端を上げて、唇を隠す。
 ダグラスは、ドアとエリーを見比べて、ガシガシと自分の頭をかき回した。
「…っその…よく、見てもらえよ!」
 指を突きつける様にエリーを指さすと、ドアに向かう。
「ダグラス…」
 乱暴な態度は、照れ隠しなのか。
 エリーの声が聞こえると、開けたドアに手をかけて、振り返った。
「……大丈夫だったら、今夜また来るから」
「えっ…」
 先程の行為を思い出し、エリーの顔に一気に朱が昇る。
 それを見たダグラスは、慌てた様に首を振った。
「莫迦! 違う! 飯だ、夕飯! 飛翔亭に行くからな!」
「あ…」
 体中がかっかと熱を帯びているように感じて、エリーはベッドの中で小さく縮こまる。
 それを見たダグラスが、ちくしょう勿体なかった、とか思ったことは知らずに。
 階段を駆け下りていく足音を聞いて、今、熱を測られたら、きっと大変なことになると、エリーは思った。










<END>



















 

 


 


ミルカッセさんと仲良くなるとみられる「落ちた紋章」ネタ。
せっかく作った空飛ぶほうき。
後期のアトリエシリーズでは、採取先への時間が短縮されて良いのに、
エリアトではただのアイテム。
なんで使わなかったのかなというところから。

2012.2.22.


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